アルヴァ・アアルトが何年もの間、試行錯誤を重ね完成させた椅子がこの「No.65」です。完成したときに生来楽天家のアアルトは、「どうだね、1000脚ぐらいは売れるだろうか?」ということを、オットー・コルホーネンに尋ねていたそうです。コルホーネンはこの椅子の脚の構造に自信を持っていたので、売れると信じていたそうです。
発表は1933年です。それ以来、このNo.65の椅子と、その他の背のないスツールタイプなどは、70年間で100脚以上売れていて、今なお生産が続けられています。もはや、アアルトのロングセラー商品というよりも、世界の小椅子のスタンダード・デザインになっています。この超ロングセラーになった成功の理由には、どのような空間にもマッチするシンプルデザインの力だけでなく、技術開発の力もあることを見逃すことはできません。
1927年のコンペでアアルトが1等に入選したヴィープリの図書館では、No.65の椅子とスツールタイプのデザインの椅子を配置し、人々は建築デザインの新鮮さに注目すると同時に、椅子の美しさと空間との調和を高く評価しました。この印象が強かったため、その後、No.65は「ヴィープリ・チェア」とも呼ばれるようになりました。 |
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