中世から、ヨーロッパでは技術を持つ製造業の世界に「マイスター制度」というものが今日まで続いています。これは陶器、織物、木工、金属をはじめ、技術を必要とするあらゆる分野でその技術の伝習と質を守っていくための制度で、その背景には職能上のギルドが存在していました。 最近の日本の新聞紙上に、ネスレ会長が若い頃、ドイツのミルク会社の営業分野で徒弟になっていたことがあったと書いていました。営業という製造技術と関係のない分野にも、徒弟、マイスター制度という、一種の職業訓練制度があることは興味深い話です。 北欧の木工マイスター制度では、10代でマイスターのもとに弟子入りした徒弟は、道具の扱い方や初歩の加工から習いはじめます。2年ほどで簡単なものがつくれるようになると、同業の地域組合がつくっている週に何度かの夜学で、図面を描くこと、木工房を経営していくための簡単な簿記などを学ぶことになります。 その後、毎年1回開かれる組合主催のマイスター試験で、自分がデザインした家具を出品し、技術試験を受けます。併せて図面の読み描きや経営についての筆記試験に合格しなければなりませんでした。この試験を通ってマイスターの称号と資格を得た後も、一般的に数年間は自分を育ててくれたマイスターのもとで働き、さまざまな社会勉強もした上で独立します。さらに5年ほどしてようやく、今度は自分の手元に徒弟を置いて教える資格を持つことを組合も世間も認めるのです。
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